日本語には「すみません」という特有の表現があります。「すみません」には謝罪(excuse me, sorry, pardon)、呼びかけ、感謝、後悔、異議などの多義的な意味がありますが、英語で端的に表現すると”sorry”となることが多いのではないでしょうか。ではこの「すみません」、法的にはどういった意味を持ち得るのでしょう?
QLD州の民事責任法Civil Liability Act 2003 (QLD)では「謝罪」を同情や後悔・遺憾の意、一般的な慈悲心や思いやりの意の表明と定義しています。また「謝罪」が過失や責任に及ぼす影響について同法では、民事手続き(一部を除く)においてある人が謝罪をしたからといってその人が自己の過失や法律上の義務違反を認めたことにはならず、謝罪は過失や責任の判断においては無関係であると規定しています。さらに、謝罪の証拠は過失や責任の証拠としては無効であると規定されています。
上記の規定を実生活に当てはめると、例えば自分が販売した製品にトラブルが起きお客様に「このような結果になってしまいすみません」と謝罪をしたとしても、「すみません」と言ったからと言って民事手続き上、自己の過失や責任を認めたことにはなりません。同様に、メールや書類で「謝罪」をした記録があっても、それが過失や責任を認める証拠とはなりません。ですので、日本人的な「すみません」の感覚でついつい”sorry”と言ってしまったとしても,それが必ずしも法律的にマイナスに働くというわけではないと解釈されます。
但し、上記の関係法規はあくまでも民事手続き上、過失や責任に関係なく当人が謝罪の意を表明できることを目的とした法律の規定です。現実的にはオーストラリアには日本の様に「すみません」と言う文化はありませんので、意図している意味ではなく”I’m sorry”の意味で理解されてしまうこともしばしばあります。こういった誤解を招かないようにする為にも、日常的に英語でははっきり言いたいことを伝えること、むやみに「すみません」と言わないよう気をつけるべきと言えるかもしれません。