暖かいケアンズでも、気温が下がると増えるのが関節炎についての相談です。人も動物も、歳を重ねるにつれて関節にある軟骨がすり減り、老化していきます。関節炎は外見からは気付きにくい疾患ですので、8歳以上の老犬老猫を飼育されている方は注意を払ってあげてください。

症状：足を引きずる、立ち上がる動作が遅い、ジャンプをしなくなる、長距離を歩かなくなる、グルーミングが減り毛並みが悪くなる、等。
対応：全ての関節炎に共通していちばん大事なのは適切な体重の維持です。肥満は関節にかかる負担を増やすので、平均より少し痩せぎみを維持します。初期の関節炎であれば関節用の健康食や経口サプリメントの使用、中期ではSPPと呼ばれる関節炎を抑える注射の定期投与、後期では抗炎症剤を使った鎮痛で対処します。無理をしない程度に運動を行い、筋肉を維持することも大切です。

　現状医学では一度老化してしまった関節は治せません。抗炎症剤の長期使用は他の臓器に負担をかける場合もあるため、症状が悪化する前に対応を始め、老化のスピードを出来る限り抑えてあげましょう。
　動 物は本能的に痛みを隠します。あからさまな痛みが出る頃には関節炎がかなり進行しているので、兆候を察知したらすぐにでも対 応を始めましょう。言葉無き痛みに耳を傾け、見えない苦しみを緩和してあげることも飼育者の義務です。

松井アキヒロ

アデレード大学獣医学部卒、獣医師。ケアンズのBalaclava Veterinary Surgeryに勤務。日本語診察希望の方は予約の際にご指名ください。(http://balaclavavet.com.au/)