2018年8月現在のケアンズの不動産市況について考察させて頂きます。今年に入ってから、市場では賃貸投資を目的に物件を購入するバイヤー(Investor)の数が著しく減っています。これはオーストラリアの銀行が、Investorに対しての融資をこれまでよりも締め付けたことが原因だと言われています。過去数年、シドニー、メルボルン等の大都会では、中国人バイヤーが賃貸投資を目的に不動産を買い漁り、不動産価格が高騰しました。それによって、一部の地域では、自分が住むための家を探している一般のオーストラリア人にとって、不動産が手を出せない価格となっています。オーストラリア人の多くにとって「マイホームを持つ」事は世代を超えた夢であり、「一般人がマイホームを持つことが出来ない社会」は、国にとっては大問題です。この打開策として、中国人の購買に歯止めをかけるため、オーストラリア政府は外国人の印紙税を引き上げ、FIRB(外資投資委員会)申請費用の導入等を行いました。また、自分が住むための家を買う人(Owner Occupier)には、賃貸投資物件を買う人(Investor)に比べて印紙税等でも優遇しています。
銀行も政府の方針に従い、Owner OccupierとInvestorへの融資では、利子や借入比率に差を付けています。Investorは、これまでのようには融資を受けられなくなったために、市場から姿を消す人も多く、今現在、ケアンズの市場でも積極的に家を探している人の多くはOwner Occupierです。
市場のバイヤーの半分を占めていたInvestorの数が減ったために、今の市場はバイヤーがセラー(売主)に比べて力を持つ、いわゆる「バイヤーズマーケット」です。不動産価格自体は下がってはいませんが、バイヤーは物件の選択に時間をかける傾向にあります。家を買いたい方には好機、家を売りたい方にとっては成約までにこれまでより時間がかかるかもしれないという状況です。販売にかかる時間はInvestor向けの物件か、Owner occupier向けの物件かによっても違いがあります。一般的に、Owner occupierは「感情」で物件を選ぶのに対し、Investorは「数字(賃貸リターン等)」を何よりも重視します。今の市況を理解した上で、バイヤー、セラー、それぞれの立場での最善策を練られることをお勧めします。