湿った砂浜を歩く。
いつもとは違う感触。
曇り空と同じくらい重たかった。
辺りは霧のように水蒸気を含んでいる。
遠くから聞こえていた波の音は荒々しく、歩みを進めていくとそれが威を纏(まと)って聞こえる。
海が見える前から想像出来るような音だった。
重たい丘を登るとそこには荒れ狂う波打ち際とカップルがいて、男性の方は折れてビリビリになった傘を右手に、それでも抱えていた。
波打ち際がいつもよりも大分近い。
遠くを見るとかなり巻いた波の中に時折綺麗な形の波のチューブを見つけた。
後ろを振り返るとカップルも帰り、辺りは自分とカラスが5.6羽。
それが一層、“退廃”とした雰囲気にしていた。
しばらく威勢のある自然を眺めている。
上を見上げると雲の隙間から青空が見えた。
テトラポットに当たるここ一番の大波を見てからそこを後にする事に決めた。
返り際に年の離れたカップルとすれ違った。
誰もいない砂丘に“愛”を添えているような気がした。
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