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■その66「こんなに違う宿題」

2007年09月05日

最近、日本のテレビのCMに、おもしろい国際比較があった。
子供に計算問題をやらせている場面がでて、その問題用紙がアップになる。日本の問題用紙には、3+4=□、欧米の問題用紙には、□+○=7、という問題が書いてある。

 

▲サイエンスルームで、みんな熱心に勉強中?

 

 詳細は忘れてしまったが、塾だか通信教育だかのCMだったと思う。子供に期待していることが明らかに違う。日本は与えられた課題を正確に答える。答えはひとつ。欧米は子供に考えさせる。そしてその答えは一通りではなく、色々な場合が考えられるわけだ。

子供達がこちらの学校に通うようになって、同じような経験をした。宿題の出し方が違う。日本の計算ドリルや漢字練習のようなプリントはほとんどない。一 番多いのは、Project, Assignmentと呼ばれる学習課題で、日本で言えば、社会・理科で行われるようになった「調べ学習」に近いかもしれない。その課題の出し方は、実に ユニークで楽しいアイデアが一杯だ。

例えば「ノベル・プロジェクト」。ある小説をテーマにする。日本なら「○○日までに感想文を書いてきなさい」となるところだが、こちらでは、この一冊の小説を使って様々な課題に取り組む。

たとえば、

1.読者としてこの本の作者へ宛てた手紙を書く。
2.著者になったつもりで本にするため、編集者に売り込む手紙を書く。
3.この本をどうやって売り出すか、プランを立てる。
4.新聞にこの本の紹介文を書いてみる。
5.この本の中のキーワードを使ってクロスワードパズルを作る。
6.この本のポスターを描く。
7.この本のストーリを使って紙芝居を作る。
8.気に入った場面を工作で立体的に表現する。
9.後編を自分で書いてみる、など。

もちろんその他に自分でやりたいことがあれば、それでも構わない。生徒は、与えられた課題の中からいくつかを選び、1ヶ月位かけて取り組む。

この宿題は6年生の国語(English)の授業で出されたものだったが、ポスターを描いたり、工作したり、と「これってほんとに国語の課題?」と親子で戸惑ってしまった。またその評価の付け方も日本とは違う。

実は、それぞれの項目には10点、20点、30点と点数が表示してあり、自分で課題を選ぶ時点で合計が100点になるようにする。ほとんどの子供は合計が100点になるように、自分の得意な分野を考慮しながら、課題を選ぶ。
しかし、高得点を望む子は、合計が100点以上になるように課題を選ぶ。それぞれの項目で満点が取れなくても、それ以上の課題をこなせば、100点が取 れる可能性が増す。場合によっては、100点以上の点数も取れるということだ。

日本では毎日の決まった宿題、週単位の宿題はあるが、このような長い期間かけて取り組む宿題は極めて少ない。

日本のプリント学習も、繰り返しの効果があり、ある程度の進歩、達成度が評価できるし、最近は「脳を鍛える〜」とか「○○式計算ドリル」とかで、大人の間でも大流行だ。もちろん、それなりに意味のある宿題なのだろう。

一方、こちらの課題は創造的で、それぞれの生徒の違った持ち味を引き出せる。かと言って良いことばかりではなく、問題もある。本人のやる気によって、宿 題に取り組む時間がかなり違う。手を抜くのは簡単だ。反対にやりすぎてしまうこともあるようだ。

息子のクラスのある男の子が、課題の締め切り間近になると、必ず1日か2日学校を休む。そして、いつもトップの点数をとる。
「ジェームスは、ぜったい家で宿題をやっているんだ。ズル休みだ!」との声が生徒から上がり、先生がその生徒に注意をした。真面目な生徒にとっても、この宿題は負担となるらしい。

ペーパーワーク、暗記中心の日本と、リサーチや創造性に力を入れるこちらの教育。本当は、両方の優れた点を取り入れたバランスの良い教育が理想なのだが。


Dorota:(地元の合唱団ではソプラノを担当。愛唱歌は日本の“花”)
■コメント:"The basic difference between Japanese and Australian homework is that Japanese focus is on memorising facts while Australians focus is on helping students to work independently and creatively. Japanese education does not cater for individuality so you see all these Japanese people with very high skills in mathematics and science but they have no flair, no creativity."
(日本とオーストラリアの宿題が根本的に違うのは、日本は覚えることに主眼をおいて、オーストラリアは自主的、創造的に勉強ができるようにすることに主眼 をおいているからだわ。日本の教育を受けても、自主性を養うことはできないから、数学や科学に飛び抜けている日本人でも、才能豊かだな、と感じることはな いし創造性があるとも思えないわ)

 
 

Matthew:(現在日本からケアンズに一時帰国し、親孝行に励む?)
■コメント:"I think studying and playing is important. Some Japanese kids study too hard. We all die in the end, so we need to have a good mix of both. We need to enjoy the good things in life too. Japanese kids spend so much time trying to remember many facts, which they end up forgetting anyway. So Japanese and Aussie kids end up at the same level I think."
(勉強することも遊ぶこともどちらも大事なことだよ。日本人の子供は勉強しすぎると思う。どうせ最後には皆死ぬのだから、両方バランス良くするようにしな いと。もちろん人生も楽しまないとね。日本の子供を見ていると物事を覚えることに時間をとられてしまっている。結局は、忘れてしまうのにね。そう考える と、日本人でもオージーでも最後は同じレベルになるってことかな)

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