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2001年1-2月号・其の43 それからは、ボーナス
2007年09月05日
高校時代の親友、小池邦夫、からの便りが届いた。久し振り。松山東高校時代、小池は書道に、私は空手に情熱を燃やしていた。彼は東京学芸大書道部に入学したが、授業に失望して中退、苦労して、絵手紙、という分野を創始する。
絵手紙、は彼の造語。現在、日本絵手紙協会会長。売れっ子の有名人だ。3年前、ケインズにも来て、講習会を開いた。
私は東京水産大卒業後、日豪合弁の南洋真珠会社に採用され、豪州北端の木曜島分場に赴任。9年半在籍したが空手への夢捨てがたく、退社して1976年1 月、ケインズに空手道場をオープン。小池は大成して時流に乗ったが、私は空手をやって何とか生きてきただけだ。ただ高校時代からの夢を通して生きてきた人 生だけは、共通している。
小池兄。久方振りにて書状拝受。小生、相変わらず空手をやって、時代遅れの生き方をしている。お互い、もうすぐ60才。小生の生き様は、もう変えようがないし、今さら変えようとも思わない。稽古後のビールがうまい。そんな毎日であればいい。
先日、俺の道場の25周年記念クリスマスパーティを地元のリゾートでやった。参加230名。古い門弟達もやって来て、祝ってくれた。パトロンのケインズ 市長も、毎年必ず参加してくれる。有難い。十分な準備をし、テーブルの席順も、合う人間を考えて、ピシッ、と決め、リゾート側に前もってファックスしてた のに、幕が開くとどうだ。リゾート側の不手際で席がバラバラになり、何とか皆を席に付かせ、落ち付くのに40分もかかった。ところがフロアマネージャー。 手前ェ達には手落ちはネェ、と言い張って謝りもしネェ。カチン、ときたぜ。
ケインズは観光都市として売り出しているが、評判は今一つ。一度来るとそれまでで、リピーターが少ない。地元にいるんだから、行く先々で、ケインズの サービスの悪さは、鼻に付く程経験している。それでも以前に比べると、ズッと良くなったんだぜ。観る所も少ないし、ミヤゲ物もオリジナリティの乏しい、何 処にでもあるような物しか売ってない。
ケインズの良さは、ノースクィーンズランドの素朴さにある。だからこそ、遠路はるばるやって来た客には、少なくとも気分良く過ごせる位の従業員への温か いサービスの仕付けを、真剣に考えて欲しいと思う。来てくれ、と頼んでおいて十分のサービスの無いのは、まァ我慢が出来るとしても、客を不愉快にさせるな んざァ、詐欺みテェなもんだ。俺はもう絶対にあのリゾートには行かネェよ、となるのは当然だろう。
ところで正岡、脳梗塞だってナァ。そうか、俺達もう、そんな年になっているのか。もう少し正岡の様子が知りたい。回復を祈る。正岡が高校の時、俺に呉れ た刀の鍔(ツバ)、今も大事に持っている。あの時には、鍔の持つ良さ等まったく分からなかったが、今見ると、見事な透かしの面白い作品で、俺の愛刀に付け ている。昨夜、取り出して眺めたよ。もうあれから40年か。鍔を柄から外し、両手に挟んで擦った。鍔はこうするのが、一番ツヤ出しにいい。擦っていると、 俺達の高校時代の思い出が、両手の間からポロポロこぼれ出て、あの正岡のダミ声が聞こえてきたよ。
今年は2000年。不思議に良い事は一つもなく、悪い事ばかり続いた年だった。道場も今までで最低。でも最後にたった一つ、朗報あり。何処でどうなったのか、俺、表彰されたよ。
豪州連邦政府が、2000年、という年を記念して、各分野のスポーツの発展の為に貢献度の高い人物、又はコーチを今年の始め、豪州全土よりノミネート し、年間を通しての選考の結果、つい先月、北クィーンズランド域からは9名が受賞。ラグビー、ホッケー、水泳、サッカー、テニス、陸上等々、豪州でポピュ ラーなスポーツだけだと思っていたら、その中に何と、俺の空手が入ったよ。
空手の技術を、正しく指導する事自体難しいが、一番大切なのは、技術の背後にある日本の文化の伝達、という事だろう。子供には、キチンとした仕付けが大 切だ。今時のガキは、まったくやりたい放題。それを法律が保護してんだから、悪くなる一方だ。俺は今でも、何回言っても聴かないガキは、俺の体を張って ヒッパタく。母親がとんで来るぜョ。法律違反だもんな。それでも続くガキは、何とか物になるが、半分以上は道場に帰って来ない。地味な空手の稽古をコツコ ツと続けられるガキに、悪い子はいない。ハイスクールに入ると、皆優等生だ。それでアッタリ前だ、と思っている。
そんな俺の指導方針の道場が、国に認められた。本家本元の日本人でさえ、空手の師範と言えば、ヤクザか右翼位にしか見てくれない。そんな空手というスポーツを通して国に認識された事は、空手を知っているからこそ、凄い事だと思う。
俺は外国に出て来る日本人の全部に言いたい。日本には空手のみならず、外国で認められている素晴らしい文化が沢山ある。外国にいる間に外から日本を眺め、もう少し自分の国の良さ、というものを考えてみたらどうだ、とナ。
受賞は私にとって、25年目の良い区切りになった。私個人ではない。空手という日本の文化を通して、日本が認識された事だ、と思う。地元の小企業の経営が、徐々に難しくなっているように、道場を維持するのも簡単な事ではない。
来年2001年は、煩わしい道場運営は、信ずるに足りる門弟にまかし、私は自分の稽古をやりたい。60才まで後1年。最後の1年、私の空手人生の締め括 りとして、悔いのない稽古がしたい。それで体が動かなくなったら、立つ鳥跡を濁さず。アッサリと道場を閉めよう。
もし2001年の12月、26周年の記念パーティが出来たら、それからは、私の残る人生への、ボーナス、だ。
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