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エッセー

2004年5-6月号・其の62 新種

2007年09月05日

カラフルで美しい。大きさは30センチ程度。沢山いるのに口が小さいので、なかなか釣れない。チャイナフィッシュ、と呼ぶのだそうだ。私が豪州最北端、トーレス海峡にいた頃。30余年も前の話だ。
「何でダェ」と聞いてみた。中国の方には失礼だが、答えが面白かった。
「何処にでもいるもんネ」
ちなみにこの魚、食べてもあまりうまくない。

「日本の女の子、今ここではニューマーケット、ってえ男共が騒いでいるヨ」

西豪州ブルームの年間行事、シンジュマツリの責任者の一人、Aさん。数年前、マツリの40周年にブルーム市から招待され、空手演舞に行った事がある。

エッ?私はその意味が今ひとつピンと来なくて聞き返した事だった。
その男、界隈の鼻つまみ者だった。無職、ヤクの常習者、全身に刺青。生涯、政府からの失業保険を当てにして生きるタイプのようだが、こんな人間豪州には沢山いるので、別に珍しい存在ではない。

そんな男に日本人の女の子がくっ付いた。近所の住民達、興味津々と見ていたらしいが、二週間目で結婚までこじつけたのには驚いたという。理由は簡単。女の子のワーホリのビザが切れてしまうからだ。

「地元の俺達にゃ、いやに肩身の狭い世の中になってきたもんだゼ」とAさん。

ちなみに日本人の女の子を追い回すタイプの第一位は、当然無責任な遊び人タイプ。次が豪州人の女の子にあまりモテないタイプ。だがこの中に結構人間的にはいい者がいるようだ。
最後は一度結婚に失敗した中高年者層で、気の強い豪州女とは再度一緒になりたくない、と考えている男達。経済的には安定しているので、日本人女性が好む対象だという。

日本人女性でもピンからキリまである。いい娘がいい男を掴み、ボロはボロを掴む、とはまァ一般論だが、外国、特に豪州のような国民性では、なかなか常識通りにはゆかないのが現状のように見える。

狭っ苦しい島国、日本からやって来た。国土は開放的だし、男共は親切のようだ。社会保障はいいし、ゆとりがある感じ。他人の国と燐家の食卓は良く見える。この国に住みたい、と外国に憧れる若い子が思うのも無理はない。

サテと、手っ取り早く豪州に住めるようになるには、ソーサナァ、こっちの男と結婚すれば簡単ジャン。外人のハズなんテェ、カッコいいしネ。すぐに永住権は取れなくても、住む権利はあるモンネ。

ビザが間もなく切れるから、早いとこ男を決めなくちゃ。一緒になっても気に入らなかったら、その内別れればいいしネ。女性には寛大で有利な法律を利用しなかったら損。別れる時は、ついでに慰謝料も請求しようっと。

こんな子はごく一部だとは思うけれど、その筋の連中と話すと、結構いるそうだ。
豪州人の野郎だって適当にやっている。時々私の道場に写真を撮りに来ていた新聞社の若いカメラマン。上げ底のような男だ。見かけはいいが中身が少ない。

この男、ある夜日本人の女連れで道場に来た。結婚するンだ、という。私にはその男が見えていたので、嘘ぬかせ、と思ったが、ペターと甘い目をしてくっ付いている女の子の手前、黙っていた。

数日後、知人を見送りに空港に行くと、その二人がいる。帰国する女の見送りらしい。女の子、男にすがり付いてビショビショと泣いていた。ヤレヤレ、結末 の知れている芝居を見ているようなものだと思ったが、これは女の子自身が目覚めなければ、どうしようもない。

その数日後、又その野郎に街で出会った。別の日本人の女の子がくっ付いていた。野郎、私の顔を見て、ゴソッと横を向いた。
まァ最近、こんな男共掃いて捨てる程いるのだろう。

平和大国、日本。平和ボケして育った日本人の若者。良くも悪しくも警戒心がなく、無防備。道徳的にはかなりルーズで外国人には憧れる、とあっては、豪州 の男共にはまるで鴨が葱をしょってやって来るように見えるのかも知れない。そんな男達に、手を出すんじゃネエよ、と野暮な事も言えまい。

豪州人と日本人を二つの輪に例えて見る。
並べて置いた二つの輪を少しずつズラしても、この輪がピタリと重なる事は絶対にない。ただ、ズラした輪が部分的に重なり合って生じる共通の部分が、ホモサピエンスとして共有できる大切な領域になる。
この領域を広げるのも、せばめて消失させるのも、輪の重なり合っていない余白の部分の働きによる。

このお互いの余白の中には、各々の国民性や文化、人間性等が詰まっている。つまりこの余白の部分が豊かであればある程、二つの輪の共有するする部分に深みが出てきて、国際結婚であってもお互い尊敬しながらうまくいく。
ただし、その余白が貧しければ、共有する部分は少しずつ消滅し、やがて二つの別々の輪に戻ってしまう。だから、輪が違う人と暮らすには、覚悟と努力が必要だということを自覚して欲しい。

どんな形であれ、私は男女の仲をとやかく非難するつもりはない。忠告するだけ野暮な世界。失敗したって身から出た錆。私の見たところ甘く点を付けても、 今くっ付いている豪州人と日本人のカップル、六、七割の輪は近い将来二つに離れてしまうだろう。父親も母親も好きな事をやってきたのだから、とやかく言う 筋ではない。ただ一番の被害者は、子供、とだけ言っておこう。

「豪州は社会保障がいいから、貰える物は貰わないと損」

そんな日本人の女性に会った。損得勘定が人間としてのプライドより優先する世の中になりつつある。外国に住む事は、間接的にその国に世話になっている事 だ。何等かの形で、その国の役に立ちたい、とは思わないか。恩を返す。それがプライド、人の魂というものだ。

その魚、いくらでも釣れる。見かけの割には、まったくうまくない。
ジャパニーズフィッシュ、という新種だそうだ。そんな名前を付けられないよう、日本人としての自分の持ち味を磨いて欲しい。

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