ケアンズの大自然の素晴らしさを
1人でも多くの人に伝えたい。

 

太田 祐さん
バードウォッチング講師・ガイド

 

ケアンズで輝く人〜太田裕さん

Profile

太田祐 おおた・ゆう
1979年8月22日 名古屋生まれ。2000年3月に大学を休学してワーキングホリデーで渡豪。現在は株式会社ワイバード(日本唯一のバードウォッチング専門の旅行会社)専属講師。CAIRNS BIRDING(ケアンズ野鳥の会)、FNQ WILDLIFE RESCUE(野生動物保護&リハビリ団体)、BIRDS AUSTRALIA(オーストラリア鳥学会)所属。”ジェイさんの楽しい日本語ツアー”でもガイドとして活動

 

 

 「ケアンズの自然の魅力〜いかに恵まれた土地を与えられているかを、多くの方に気づいてもらいたい。」そんな熱い想いを持つ、バードウォッチング専門ガイド、太田さんにお会いした。

 

「ケアンズから日帰り圏内で
約400種類の鳥を見られます」

静かな佇まい。ケアンズの大自然の一部になりながら、樹々や動物たちを見詰める姿が目に浮かぶ。

 

 

 「釣りや山歩きなど、年齢や環境とともに興味の対象は変わったけれど、小さい時から自然は大好きでしたね。母の影響で日本でもバードウォッチングはしていました」という太田さん。
大学生の時、NHKで小人ペンギンのドキュメンタリーを見て、人が住んでいる場所にペンギンがいるなんて!と惹かれたのがオーストラリアに来たきっかけ。

 

何となくやってきたケアンズだったが、周りにたくさんの鳥がいるので自然と夢中に。 
わからない鳥がいたら、写真を撮り、図鑑で調べることを繰り返した。

 

「2年くらい前は、1年のうちに300日以上は森の中にいたと思います。今も休みの日は家にはいません。ドライブに出ます」
6kgのフィールドスコープや、自分の持ち物の中で一番高い(!)というカメラをかついで鳥を探す。

 

ケアンズで輝く人〜太田さん

「砂漠や寒い場所など、様々な環境を持つオーストラリア全体で800種類近い鳥がいると言われていますが、ケアンズの日帰り圏内では、その半分近い400種類を見ることができるんです。ものすごい濃さですよね」
日本とは違う鳥が多く、例えば日本では絶滅危惧種と呼ばれるミサゴが市内のヨットハーバーのポールにたくさん止まっていたり。5日間あれば200種類は見つけられるという。「日本だったらそれだけの鳥を見るのに5年くらい、かかるかもしれません」

 

 

時間、季節、更に風向きなどで見られる鳥も変わってしまう。再現性の低いバードウォチングのガイドとしては、どんな時間に光がここから射して、どんな鳥がやって来る…といった、鳥における自分なりの地図を持っている必要がある。
「たくさんの種類を見たい方、いい写真を撮りたい方、とお客さんの要望も様々なので、自分の中で全部の情報をつなげておくには、しょっちゅう色んな場所を訪れておく必要があるんです。

 

 

でも熱病のようなものかな(笑)。この自然の楽園に住んでいる事が誇りだし、趣味でもあり、仕事でもあり、生き甲斐でもあります。」

 

 

「自分の活動が、動物達の愛らしさや環境問題を知るきっかけになれれば」

太田さんは、空いている時間には、野生動物レスキューというボランティア活動も行っている。

 

 

市民の人から連絡が入ると、傷ついた動物を取りに行って応急処置をしたり、看病したり。「もらってきた卵から雛がかえったり、動物とのドラマにはしょっちゅう感動してます」

 

 

夜中だろうが、休日だろうが容赦なくかかってくる電話に快く応じるのは全てボランティアのスタッフ。
「皆、好きで集まっているんですね。それだけ生き物を意識する機会が多いのでしょう。でも黙っていてもこれだけ多くの人が動いているのはすごいことです。日本で同じような活動を行っているボランティア団体の方も、ケアンズの人々の意識の高さを羨んでいました」

 

 

他に、大学の動物の研究の手伝いに出かけることも。先日は、絶滅したと思われていたモモンガ種が見つかったという逸話を聞いて捕獲。レーダーをつけて分布などを追跡調査した。夕方に400kmも離れたタウンズビルに向かう運転も苦にならず。

 

 

また、最近は同じく大学の研究の手伝いで、キュランダへ向かうハイウェイで、動物の交通事故を減らすために、テスト用のフェンスを何種類も作って脱出させてみるという実験をしたとか。

 

 

ケアンズで輝く人〜太田さん

 

「文明生活の中にいながら自然やかわいい動物達を大事にして行きたいという、極論すれば矛盾した事をしています。
聖人でも運動家でも何でもないので、せめて自分の目に留まる範囲の傷ついた動物達を助け、自分の活動が動物達の愛らしさや、環境問題を知ってもらうきっかけになれればこれ以上の事はありません。
これだけ、仕事として趣味として楽しませてくれる自然へのせめてもの恩返しです。」

 

 

 

 

「生き物の不思議を知ったら新しい楽しみが増えるはず」

ケアンズは本当に特別な場所、と言う太田さん。
「動物が好きで、マダガスカルやアマゾンへ行こうと思う人が多いようですが、準備も費用も覚悟も必要ですよね。でも、ケアンズもそれらの土地に決して劣らないレベルです。苦労しなくても近くに奥の深い自然がある、本当に珍しい環境を持った町だと思います」

 

 

ケアンズで輝く人〜太田さんのウェブサイト太田さんが運営するウェブサイト"ケアンズEye! "。

自然や野生動物の美しい写真と情報満載。

エコツーリズムという言葉が市民権を得た今だからこそ、ケアンズの大自然の魅力を打ち出して行きたいという夢が彼にはある。
「いかに恵まれた土地かということを1人でも多くの人に気づいてもらいたい。例えばエスプラネードを歩いているだけでも、色々な動物に出会えます。薄いガイドブックでも持って、これは◯○だと楽しんでみては?」

 

 

中には、1万キロ離れたシベリアから、はるばるケアンズまで飛んでくる渡り鳥もいるとか。
「人間の体では考えられない。GPSもなしにそれだけの距離を飛んでくるんですから。まさに神業です。経験のない若い渡り鳥は力尽きて途中で落ちてしまったり…。
無事到着して、でも涙が出るくらい羽がボロボロになった鳥をエスプラネードで見かけたりすると、よく来たね〜としばらく話しかけてしまいます。
どんな旅を終えて来たんだろうと想像するだけでワクワクします。

 

 

本当に彼等は混じりっけなし、ですね。無駄がない。人間と違ってちょっと油断したら死が待ってますから。」
そんな動物たちの真剣に生きる姿を知るにつけ、地球は人間だけに与えられたものでないということ、なるべくお互い迷惑にならないようにしなければ、と思うのだそうだ。
「せっかくこんなに良い条件の所に滞在しているのだから、周りの自然や動物に目を向けてほしいですね。アリでも何でもいい。生き物の不思議を知ったら新しい楽しみが増えるはず。
一人一人が、恵まれた環境にいるのだという意識を今より少しでも高めれば、それは大きなうねりとなって節々へ届いていくはずです」

  
 
 

「知らなかった〜」の連続でした。身近にありすぎて、興味も感謝も薄れがちだった自然や動物への見方が一気に変わるほどの衝撃!私たちって、スペシャルな場所に住まわせてもらっているんですね。そう思うと、自然とどうやったらこの環境を保護していけるんだろうという方へも意識が及んで…。太田さんの知識、存在はすごく貴重だと、今まで隠れキャラ(?)だった彼にお願いしてインタビューに応じていただいたのでした。次号からは、ケアンズの自然の神秘を紹介していただくコラムも開始。乞うご期待です! Keiko

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>> マスターワークス代表・伊東和雄

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ケアンズの大自然の素晴らしさを伝えたい

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